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2006年11月30日

煌夜祭

・煌夜祭(多崎礼)評価4.0



18諸島の世界を巡り、語り部たちは話を集める。
冬至の夜、語り部たちは人を喰う魔物に物語を聞かせるため館に集う―――煌夜祭。
今年も廃墟となった島主の館で2人だけの煌夜祭が始まった。
第2回C★NOVELS大賞受賞作!

バラバラに配置された物語が、読み終えると同時にぴたりとひとつにつながる快感。
伏線の張り方が絶妙でおもしろい。
表紙の絵もよく作品を表していていい雰囲気。

この作家さんの次の作品もぜひ読んでみたい。
posted by 歯車 at 13:45| Comment(0) | TrackBack(0) | 4つ星本 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2006年11月29日

繭の夏

・繭の夏(佐々木俊介)評価3.5



大学生の祥子と高校生の敬太郎。
一体の不可解な人形が2人を過去に起こった2つの自殺事件へと誘う。
スリーピングマーダーがテーマの青春ミステリ。

象徴的な題名がいい。
読み終えてから表紙を眺めるにやりとしてしまう。
繭から出てきたのは結局・・・というわけか。
いい題名をつけたものだ。

中盤までは退屈だったが、
徐々に謎が明らかになってくる終盤以降はおもしろく読めた。
犯人は最後までわからなかったけれど。

単行本の巻末の第六回鮎川哲也賞の選考作品の中に、
市川拓司さんの名前があがっていたことに年月を感じた。

小沢健二などの曲が流行っていた90年代が舞台なので、
ノスタルジックな雰囲気を味わいたい人は読むといいかもしれない。
posted by 歯車 at 20:46| Comment(0) | TrackBack(0) | 3つ星本 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2006年11月28日

バーティミアス3

・バーティミアス3−プトレマイオスの門(ジョナサン・ストラウド)評価4.0



ゴーレムの事件より3年。
17歳になったナサニエルは情報大臣という帝国の要職を勤めるまでに成長していた。
しかし、米国との戦争が行き詰まる中、市民の間には魔術師に対する不満が高まっていた・・・。

傑作ファンタジーここに完結。


このシリーズには悩まされた。
1巻は期待はずれで、読むのをやめようかと迷った。
一冊600ページもあるため、読んでいる最中手が疲れて苦労した。
不満点はあったけれど、最終巻を読んだ今はこう思う。

ここまで読んできてよかった。
こんなおもしろいファンタジーをありがとう。

このシリーズの主人公ナサニエルはひねくれている。
ふつうのファンタジーの主人公は腐敗した権力を打ち破るものだけど、
ナサニエルは違う。
自ら進んで腐った山の頂点を目指し、権力を行使できる地位に就くことを強く願う。
そんな奴だから性格はもちろん歪んでいる。
愚かな一般人を導くために魔術師による支配は当然だと考えるような奴である。
そんな嫌な奴が、この最終作であんなに予想外の活躍をするなんて。
あまりのおもしろさに、睡眠時間を削りながら読みえ終えた。

このシリーズは三作読んで初めて評価できる作品である。
ぼく自身、一作目の"サマルカンドのアミュレット"はつまらないと感じたため、
三作目がこんなにおもしろいとは予想していなかった。
話がおもしろくなり始める二作目までが長いので、敷居は高いかもしれないけれど、
ファンタジー好きにはぜひ読んでほしい作品である。

今作は完結作とのことだが、
続きがあるようなラストなのでファンとしてぜひ続編が出ることを期待したい。
posted by 歯車 at 15:54| Comment(0) | TrackBack(0) | 4つ星本 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2006年11月24日

僕らの事情。

・僕らの事情。(デイヴィッド.ヒル)評価4.5



「ゴール!」

敵チームのやつらは、口をあんぐりと開けたまま立ちつくしていた。
ぼくたちは歓声をあげながら、手を叩いた。
ゴールポストの間を走って、そのままネットに突っ込んだサイモンの口元には、
にやりとした笑みが浮かんでいた。
サイモン。
頭がきれて、ユーモアのセンスは抜群。
ぼくの親友。
そう、来年か、再来年かには死んでしまう、ぼくの親友。
どんなに悲しいことがあっても生きることは素晴らしい。
ニュージランド発の青春小説。


当たり本。
SNSでこの本のレビューを書いて本の存在を教えてくれた人に感謝。

主人公と不治の病を抱えた登場人物が心を通わせる話には、
無理に泣かせようとする作品がある。
たとえば、セカチュウ、たとえば、オグ.マンディーノのとある本。
基本的にそういった本はわざとらしく卑怯な感じがして嫌いだ。
この本の主人公ネイサンの親友サイモンは筋ジストロフィーという不治の病に冒されており、近いうちに死ぬ運命にある。
嫌いな泣かせ本と似た設定なのだが、それなのにおもしろいと感じた。

まず、サイモンの性格がストライクゾーンだった。
もともとハリウッド映画にあるような攻撃的なんだけど、笑いを含んでいるようなアメリカ風の皮肉は大好き。
弱っていく自分の身体さえジョークのネタにして毒舌を吐くサイモンの性格を誰が嫌いになれようか。

次にこの本が泣かせることではなく、
ネイサンとサイモンのふたりの友情の育みを描くことに主眼が置かれていたためだろう。この本の大部分はネイサンとサイモンのユーモラスな日常が描かれている。
サイモンの悪くなっていく病状や不満足な身体への嘆き。
そういった物語の核である重い部分もきっちりと描かれているが、割と軽いタッチでさらりと描写してある。
それだからだろう、不治の病という暗い設定が背後にあるのに、
楽しげなふたりの生活には自然と微笑んでしまう。
それで、最後まで微笑みながら読んだのかというと、最後はやっぱり泣いた。
悲しさばかりでなく、爽快さを含んだ涙。
うーん、なんか不思議な感覚。
もうふたりの友情に乾杯って感じ。

表装もいい。
青空を背景に飛び出すようにジャンプする少年の両足。
何かの殻を打ち破り走り出しそうな疾走感を感じる。

いろんなことがツボに入った本でした。

本より、自分的メモ
みんなが思わず新聞を買いに走ってしまう見出しの要素。
「上流社会、セックス、宗教、ミステリ」
posted by 歯車 at 23:21| Comment(0) | TrackBack(0) | 4つ星本 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

芥子の花-金春屋ゴメス

・芥子の花-金春屋ゴメス(西条奈加)評価3.5



海外に出回っている上質の阿片の出所は江戸国?!
原料となる芥子畑を探し、
新たに仲間に加わった女剣士朱緒と供に裏金春屋の面々が江戸国を駆けずり回る。
痛快時代劇小説、金春屋ゴメスシリーズ二作目。

前作と同様楽しく読ませてもらった。
女剣士の朱緒の登場で辰次郎の熱血に拍車がかかり、程よい塩梅。
棒術も身に付きつつあるようだし、次回作で辰次郎が活躍する姿が目に浮かんでしまう。
次回作でも奮闘に期待したい。
posted by 歯車 at 14:49| Comment(0) | TrackBack(0) | 3つ星本 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2006年11月20日

SPEED

・SPEED(金城一紀)評価3.5



普通の女子高生として退屈な毎日を過ごす。

変わらないと思っていた、そう思いこんでいた、あのときまでは―――。
これから話そうと思っているのは、わたしの生まれて初めての冒険の話だ。
弾けろ青春!ゾンビーズシリーズ第三弾。

ゾンビーズシリーズ二作目のフライ、ダディ、フライの女子高生版のような話ながらも、
読後の爽快感は健在だし、
読んでいて走り出したくなるような各所にシーンがあったのは、さすが。

アギーが見せた新鮮な一面もいい。
仲間と認めたら、対等の立場で向き合い、成長のためなら甘えを許さない。
こういう厳しさって好きです。
posted by 歯車 at 19:46| Comment(0) | TrackBack(0) | 3つ星本 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2006年11月15日

告白

・告白(町田康)評価3.5



あかんではないか。

気弱で鈍くさい子供だった熊太郎がいかにして暗闇へと転がっていったのか。
明治に実際に起きた大量殺人事件"河内十人斬り"をテーマに
人を殺人に追いやる狂気を描いた長編小説。


くほほ。おほほ。
この言葉が頭から離れない。
跳ねて駆けるかのよう、リズムが抜群。

思いが伝わらない寂しさや孤独、思うようにできない自分の弱さ、
博打をやる人間の心理、森を酢醤油の瓶が飛ぶという描写

ところどころにうーむと唸る表現があった。
暗くなりがちな話をコミカルに描いているのもすごいと思う。
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2006年11月13日

風に桜の舞う道で

・風に桜の舞う道で(竹内真)評価4.0



早朝マラソン、失恋、喧嘩、家出、受験。
浪人生として1年間過ごした桜花寮。
あれから寮は閉鎖され、ぼくたちは別々の道を辿っている。
気がつけば、いつの間にやらあれから10年が経った。
懐かしさとほろ苦さを感じさせる青春小説。

作品全体に漂う懐かしい香りが心地いい。
青春時代にたった1年過ごしただけなのに、
いまだ寮生たちが絆を感じ続けていることをうらやましく思う。

この作品にも自転車で移動するシーンがあったけど、
竹内さんはよほど自転車のことが好きなんだろうな。
posted by 歯車 at 16:08| Comment(0) | TrackBack(0) | 4つ星本 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2006年11月07日

いつもの朝に

・いつもの朝に(今邑彩)評価4.0



容姿端麗で成績優秀な兄。
顔はにきびだらけで落ちこぼれの弟。
テディベアに隠された謎がふたりの兄弟の歯車を狂わせる。
戦慄と感動のホラーミステリ。

おもしろい。
登場人物がだんだんと追い込まれていく展開や二転三転する状況。
物語にぐいぐいと引き込まれる。
家族愛や兄弟愛を感じる読後感もいい。

著者の他作品も読みたくなった。
posted by 歯車 at 08:09| Comment(0) | TrackBack(0) | 4つ星本 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2006年11月06日

風流冷飯伝

・風流冷飯伝(米村圭伍)評価3.5



瀬戸内海に面する小藩、風見藩。
武家の次男に生まれし冷飯食いたちがのほほんと暮らすのどかな藩であります。
そんな冷や飯食いたちがひょんなことから藩の存続をかけた事件に巻き込まれることに。自由気ままな冷飯食いたちの生活を描いた時代小説

牧歌的な雰囲気が心地よい。
同じような雰囲気をもつ作品に宮本昌孝の"藩校早春賦"があるが、
あの作品のように次男坊たちが友情や結束を深めるエピソードが多ければ、
より楽しく読めたと思う。
posted by 歯車 at 23:37| Comment(0) | TrackBack(0) | 3つ星本 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2006年11月05日

死んでいる

・死んでいる(ジム・クレイス)評価3.5



バリトン湾の砂浜で振り下ろされた花崗岩はふたりを撲殺死体にした。
寄り添うように倒れ、腐りゆくふたつの亡骸。
腸はかもめについばまれ、肉の境目からは蛆が湧き出し、腐臭があたりを漂う。
死の受け入れがたく残酷な真実から得ることができる救いとは?
無神論者の作家が死の救いを求めて書いたふたつの死体の物語。

朽ちていく死体を淡々と描写した本。
特に冒頭のふたりが撲殺されるシーンの迫力はすごい。
ここだけで評価するなら5つ星。
医学的、生理学的な観点から夫婦がどのように死体になったかをつぶさに描写している。
あまりのすごさに首の辺りを圧迫される感覚と息苦しさを憶えた。
ここの部分だけでも読んで損はない。

物語は4つの視点から書かれていたが
時間の流れが順方向と逆方向が入り乱れ複雑で紛らわしい印象を受けた。
この辺をもっとわかりやすくしていたら、読みやすくなっていたと思う。
posted by 歯車 at 23:04| Comment(0) | TrackBack(0) | 3つ星本 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

オババの森の木登り探偵

・オババの森の木登り探偵(平野肇)評価3.5



東京の一角にある雑木林。
その森はオババの森と呼ばれ、
木の上の家、ツリーハウスには"木登り探偵"が住んでいた。
迷子になった猫、少女の腕の痣、盗まれていく竹、蹂躙される樹々たち。
森を愛する探偵が活躍する野外ミステリ。


子供のころの理想の秘密基地ってツリーハウスのイメージだった。
見上げるぐらい高い木の枝の上にある家に縄梯子なんかを使って中にはいる。
ぼくも友人の家の庭や山の中など、
ダンボールやビニールを材料にいろんな場所に作ったけど、
思う浮かべた最高の秘密基地はツリーハウスだった。
そんな小学生のころの気持ちを思い出すと、
森のツリーハウスでのんびり暮らす主人公の翔平の生活は理想像そのもの。
もうちょっとツリーハウスを舞台にした牧歌的な話が書いてあれば、より好みだった。
posted by 歯車 at 22:16| Comment(0) | TrackBack(0) | 3つ星本 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

SOKKI!

・SOKKI!-人生には役に立たない(秦建日子)評価4.0



大学時代、ぼくは"速記研究会"に入っていた。
速記に興味すら持っていなかったぼくが速記研究会に入ったのは、
きれいな女の子に誘われたからだった。
ああ、なんて単純で恥ずかしい理由だろう。
新鋭の作家が描くスーパーマイナー技術にかけた青春。


おもしろい。
恋愛、友情、熱血の青春の三要素がしっかりと詰め込まれた一冊。
冴えない主人公が風変わりなヒロインに振り回される様子が
なんだか見ていてほほえましい。

80年代の早稲田大学が舞台なので、
その辺に青春時代を送った人はツボにはまるかも。
posted by 歯車 at 21:19| Comment(0) | TrackBack(0) | 4つ星本 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2006年11月02日

火天風神

・火天風神(若竹七海)評価4.0



衝撃が健次を弾き飛ばした。

それが凄まじい勢いの風のなせる業だとわかったのは、しばらくしてからだった。
気づけば健次は縄にがんじがらめにされ、網にかかった魚のように宙に浮いていた。
落下の衝撃でロープが胸をしめつけられ、肋骨あたりから嫌な感触が響いてきていた。

「叔父さん、叔父さん」

朦朧とした頭のどこかで甥の声が聞こえた。
三浦半島に接近した最大瞬間風速70m超の観測史上最大規模の台風。
うなる海と荒れ狂う風の中でしらぬいハウスの滞在客は恐怖と絶望を感じた。
大自然に翻弄される人々を描いた傑作パニック小説。


おもしろい。
滞在客に次々に降りかかる災難に最後まで息が抜けない。
杉田の嫌悪感を感じさせる下種ぶりもいい。
彼のおかげで緊張感が生まれ、おもしろさが増している。
posted by 歯車 at 09:16| Comment(0) | TrackBack(0) | 4つ星本 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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