[PR] SEO 墨汁二滴: 4つ星本

2008年02月21日

「図解雑学 TCP/IP」ユニゾン

1 図解雑学 TCP/IP(ユニゾン)評価4.0
図解雑学 TCP/IP

「IPアドレス」って何?
ネットをやっているとよく見る単語だけど、
何の役に立つのか全くわからない。
そんなあなたにおすすめするネットワーク入門書。


わかりやすく読みやすい良書!
ネットの仕組みや、やっているとよく耳にする単語を丁寧に解説してある。
「ひとつの題目に対して見開きを1ページを使って解説」という理解しやすい構成もうれしいが、
加えて、右ページがすべてイラストによる解説となっており、
文章を読んでわからないことがあっても、
イラストを眺めることで理解することができる。

ネットをやっていて技術的なことを少し知りたいなーという人におすすめ。
posted by 歯車 at 20:16| Comment(0) | TrackBack(0) | 4つ星本 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2007年09月30日

「鹿男あをによし」万城目学

80 鹿男あをによし(万城目学)評価4.0
鹿男あをによし
大学教授の勧めで主人公がなったのは、期限付きの高校教師。
そこで出会ったのは寡黙で反抗的な堀田イト。
そして、いつの間にか主人公は「サンカク」を巡る戦いへと飲み込まれていく。
壮大そうで実は小さい不思議な青春小説。

おもしろい。
前作「鴨川ホルモー」よりもユーモアは抑えられているものの、
個人的には物語として楽しく読めたこちらのほうが好き。
ホルモーの主人公の性格が優柔不断で煮え切らなかったけど
本作はどことなく割り切ったさっぱりした性格だったのが、
爽快さにつながりそれがよかったのかもしれない。
堀田イトのキャラクターもよい。
口では語りはしないが要所では必ず登場し行動で気持ちを示す。
こそばゆい感じがたまらない。
次回作も楽しみ。
posted by 歯車 at 22:52| Comment(0) | TrackBack(0) | 4つ星本 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2007年08月12日

「僕僕先生」仁木英之

73 僕僕先生(仁木英之)評価4.0
僕僕先生

働くこともせず親の財産を食いつぶすだけの自堕落な日々を過ごしていた王弁。
可憐な少女仙人、僕僕との出会いが彼の心を動かした。
古代中国を舞台にしたほのぼのするファンタジー小説。

ネットの書評に「冒頭の王弁は古代中国版ニート」と書かれていたが
親の財産を食いつぶしながら近くの居酒屋に通う姿はまさにそう。
「うおー、王弁!しっかりせい!」と思わず語りかけたくなるほどの自堕落っぷり。
そんな王弁が僕僕との出会いにより成長していく様は心地よい。
からかわれていると自覚しながらも僕僕に翻弄される王弁のうろたえる様子も微笑ましい。
切なくも幸せなラストには涙汲んでしまった。
さすがファンタジーノベル大賞と納得できる作品だった。
posted by 歯車 at 13:50| Comment(0) | TrackBack(0) | 4つ星本 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2007年07月29日

「裸者と裸者」打海文三

67 裸者と裸者 上下(打海文三)評価4.0
裸者と裸者〈上〉孤児部隊の世界永久戦争

レイプ、強盗、人身売買が日常としてはびこる荒廃した内紛下の日本。
混乱の中で両親を失った海人は幼い妹と弟を養うため小さな手に銃を握った。
荒んだ世界で生きる少年と少女の成長物語。

ページを開いてその日のうちに一気読み。
文句なしに面白い。
海人やその周囲の人々が悲惨な状況の中でも温かい絆で結ばれているところが胸を打つ。
posted by 歯車 at 12:26| Comment(0) | TrackBack(0) | 4つ星本 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2007年06月04日

「チルドレン」伊坂幸太郎

58 チルドレン(伊坂幸太郎)評価4.0
チルドレン
常識破りで言うことはへんな屁理屈ばかり。
さまざまな視点から語られる陣内という男の姿。
伊坂幸太郎の描くさわやかな気持ちになれる連作短編集。

伊坂さんはキャラの造詣がうまいですね。
息苦しさを吹き飛ばすかのような陣内の発言や行動。
爽快な気分になれる。
スカッとしたい人におすすめ。
posted by 歯車 at 20:13| Comment(0) | TrackBack(0) | 4つ星本 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2007年06月03日

「老ヴォールの惑星」小川一水

57 老ヴォールの惑星(小川一水)評価4.5
老ヴォールの惑星
有機物はおろか液体の水の存在すら許さない−高温・高圧の星サラーハ。
水素大気の大嵐と超臨界水の渦の中で育まれた生命たちは
かつてヴォールが予見した星を探すことで迫りくる滅亡と抗っていた。
SFの名手が描いた珠玉の短編集。


どの短編も傑作揃い。
胸を張って人におすすめできる本。
表題の「老ヴォールの惑星」もよかったけど、
個人的に気に入ったのは極限状態を描いた「ギャルナフカの迷宮」と「漂った男」の2作。
「ギャルナフカの迷宮」は食料と水の乏しい脱出不可能な洞窟に放り込まれた囚人を描いた作品。
囚人が囚人を襲う洞窟の中で疑心暗鬼にかられた主人公がとった行動。
なるほど、たしかに人間の一面を鋭く捉えていた。
「漂った男」は事故で海しかない惑星に不時着した男がひとりぼっちで漂い続けるという話。
遭難ものといえばそうなのだけれど、主人公の置かれている状況が少し変わっていて、
たとえれば、口と耳だけで世界につながっている状態。
うん、わかりにくいね。
まあ、興味を惹かれた人はどうぞ。

ひさびさにすげいと思えた本だったよ。
posted by 歯車 at 18:34| Comment(0) | TrackBack(0) | 4つ星本 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2007年03月01日

「なかよし小鳩組」荻原浩

35 なかよし小鳩組(荻原浩)評価4.0
なかよし小鳩組

30代のさえない男、杉山。
彼が勤めるのは零細広告代理店ユニバーサル広告社。
あわや倒産寸前というところで飛び込んできたのは
ヤクザ小鳩組のイメージアップ戦略というとんでもない代物。
果たして仕事は成功するのか?
くすりと笑えるユーモア小説。

おもしろい。
前作「オロロ畑でつかまえて」は未読だけど楽しめた。
この終わり方でも満足だけど、
欲を出せば勝也の今後や猪熊の今後など、もうちょっと後のことまで読みたかったなぁ。
ヤクザを怖くも滑稽な人間味ある姿で描けているところが見事。
エゲツナイことしているはずなのに、妙ににくめないというか。
うまい。
杉山と娘の早苗のどこかずれた会話も面白い。
温かくなれるいい本でした
posted by 歯車 at 20:26| Comment(0) | TrackBack(0) | 4つ星本 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2007年02月20日

世にも奇妙な職業案内

28 世にも奇妙な職業案内(ナンシー・リカ・シフ)評価4.0



こんな仕事をしている人がいるのか。
世の中に潜む奇妙な職業を生業とし真摯に働く人々。
そんな彼らを12年間の歳月を費やして撮りつづけた写真家ナンシー・リカ・シェフの労作

片方のページには職業とその人物の簡単なプロフィールを説明する5行程度の文章、
もう片方にはその仕事をする人のポートレート。
見開き1ページで1つの職業が紹介されている。
簡素で淡々とした説明文は想像力をかきたるといった意味でよかったと思う。
ひとつひとつの職業に重厚さが出ていた。
ポートレートの写し方がすばらしい。
さすがプロといった感じ。
不可思議な仕事で働く人々の怪しさや魅力などがうまく表現されていた。
こういう風に人の写真を取れたらな。

自分が驚いた職業は譜面士。
ピアノコンサートでピアニストが演奏する譜面を適切なタイミングでめくるのが仕事だそうな。
posted by 歯車 at 17:39| Comment(0) | TrackBack(0) | 4つ星本 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2007年02月15日

雷の季節の終わりに

8 雷の季節の終わりに(恒川光太郎)評価4.0



次元の狭間にある小さな集落"穏"。
そこで暮らす少年、賢也には"風わいわい"が取り付いていた。
ホラー小説大賞受賞作"夜市"の作者が綴る受賞後、第一作。

泥臭い不思議な世界観と和風テイストな気味の悪さ。
こういう雰囲気の作品は好きです。
話もおもしろく一気に読ませられました。
次回作も気になる作品でした。
posted by 歯車 at 14:19| Comment(0) | TrackBack(0) | 4つ星本 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

それからはスープのことばかり考えて暮らした

7 それからはスープのことばかり考えて暮らした(吉田篤弘)評価4.0



仕事をやめ映画館へ通う毎日を送るオーリィ君。
彼は今日もゆっくりとした時間を過ごす。
ほのぼのとした気持ちになれる短編小説。

日曜日に紅茶を飲みながらひなたぼっこして読みたくなる一冊でした。
様々なわずらわしさなどを感じさせないオーリィ君の穏やかな生活に癒されます。
ほっと一息つきたいときにどうぞ。
posted by 歯車 at 14:16| Comment(0) | TrackBack(0) | 4つ星本 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2007年01月05日

ワイルドソウル

6 ワイルドソウル(垣根涼介)評価4.5



南米に広がる熱帯雨林地域、アマゾン。
その酸性の土壌下にはいまも数万の棄てられた日本人たちが眠っている。
無念を抱いて眠る同胞たちのために男たちが国家を相手に勝負を仕掛ける。
復讐する男たちを描いた長編小説。

600ページの文字がぎっしり詰まった単行本。
長い。
けれどこれは意味のある長さだ。
読むことをぜんぜん苦痛に感じなかった。
前半の移民たちを待っていた凄惨な生活の描写。
後半の先の読めない緊張する展開。
これぞエンターテイメント。

高度経済成長の影でこんなことが起ったなんて知らなかった。
棄民という側面を含んでいたブラジル移民政策。
国家が己の体面のために自国の民をだます。
唖然とした。
最近も日本では天下りをはじめとした官僚たちの自己保身が続いている。
当時と同じ腐った体質はいまだにあるのかもしれない。
ある将来像が頭に浮びぞっとした。
posted by 歯車 at 16:50| Comment(0) | TrackBack(0) | 4つ星本 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

カタブツ

5 カタブツ(沢村凛)評価4.0



不器用で、地味で、こつこつとした暮らしを送る。
決して派手ではない。
けれど結局、世間を動かしているのはまじめな人たちなのだ。
地味でまじめな人たちを主人公とした6つの物語。

どの短編もカタブツと呼ばれるようなまじめな人物を主人公にしている。
まじめな地味な人物たちの物語だからおもしろ味に欠けるかといったら、そうではない。
むしろ、逆。楽しめた。
誠実に物事に取り組むがゆえにいろんなことに悩む主人公たち。
共感できた。
物語のオチも意外さがあってよかった。
怖い感じのオチが多かったのが気にはなったけど。
お気に入りキャラは樽見。
表に出さない不器用なやさしさがいい。
posted by 歯車 at 15:58| Comment(0) | TrackBack(0) | 4つ星本 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2007年01月04日

神様からひと言

1 神様からひと言(荻原浩)評価4.0



大手広告会社から珠川食品に転職した佐倉涼平はやりきれない日々を送っていた。
着任早々の失敗。
販売促進課からリストラ候補者の集まるゴミ溜め"お客様相談室"への転属。
鳴り止まないクレーマーからの電話、改善されない職場環境、くせのある同僚たち。
果たしてこのゴミ溜めで涼平はやっていくことができるのか。
痛快な青春小説。

おもしろい。
腐りきった食品会社を舞台に新入社員の涼平が奮闘する様子は気持ちがいい。
お客様相談室の同僚をはじめ登場人物も味があり楽しい。
お気に入りは篠崎。
あんな謝りテクニックをぜひ身につけたいものだ。
posted by 歯車 at 18:03| Comment(0) | TrackBack(0) | 4つ星本 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2006年12月08日

翼はいつまでも

・翼はいつまでも(川上健一)評価4.5



中学2年生の秋。
ぼくはさえない中学生だった。
勉強ができるってわけでもなかったし、野球部でも補欠だった。
でも、ラジオからビートルズが流れたあの夜。
ぼくの中で何かが変わったのだ。
友人との衝突、大人への不信と反発、そして初恋。
中学生の眩しい日々を描いた青春小説。

いい!
読後は温かい余韻が残り、それにしばらく浸ってしまうほどだった。
理不尽な大人たちへの不信と反発、
野球部での仲間との団結、
湖での淡くほのかな初恋。
これぞ、青春って感じの傑作。
青春アドベンチャーでラジオドラマ化されたものも聞いてみたいな。

別の作品も読んでみたい作家さんです。
posted by 歯車 at 17:27| Comment(0) | TrackBack(0) | 4つ星本 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2006年12月07日

太陽がイッパイいっぱい

・太陽がイッパイいっぱい(三羽省吾)評価4.5



ややこしくする必要の無いことを、なんでわざわざややこしくするんだ。
今日も4流大学の大学生であるイズミはマルショウの仲間たちとともに、
建設現場で汗を流し飯を食らう。
汗と埃まみれの青春成長小説。


画像は単行本版。
文庫本版も出ているけれど、単行本の表装のほうが好みなもので。
三作目の"イレギュラー"の社会性を薄くして、
その分、馬鹿っぷりを濃くしたような作品なんだけど、
おもしろい、そして、笑える。
ページをめくるたび、
"ち○ぽこ"とか"ちん○"などのアレな単語がどこかしらから目に飛び込んできて、
品性の欠片も無い。
「小学生かよ」ってぐらい下品な単語の羅列に、
「うわー、あちゃー」と思うけれど、だけど、笑える。
カンやクドウなどマルショウの個性的な面々の馬鹿な思考やはっちゃけた行動と
地の文の冷静な突っ込み。
にやついた顔を学校の隣の席の人に見られ、けげんな顔をされるくらいは笑える、
うわー、あちゃー。

笑える青春小説をお求めの方におすすめ。
もちろん、上品な人には向かないのであしからず。
posted by 歯車 at 20:20| Comment(0) | TrackBack(0) | 4つ星本 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2006年12月05日

ダレンシャン

・ダレンシャン1-12+外伝(ダレン・シャン)評価4.0



「現実の世界はきたないし、とても厳しい。
主人公がどうなろうがおかまいなしで、ハッピーエンドなどそっちのけだ。
人は死ぬし、けんかには負けるし、悪が善に勝つ。
このことを、話に入る前にたしかめておきたかったんだ。」

世界各国で訳され子供たちを熱中させた大人気シリーズ、ここに開幕。


非情にして残酷な物語だけど、すんごくおもしろれぇぇぇええ!
最初はそうでもないけれど、巻数が進むほど主人公がより数奇な運命に巻き込まれ、
加速度的に面白くなっていく。
6巻目過ぎたあたりからのおもしろさは異常。
図書館で借りるたびにすぐさま読み終え、
最終巻までの4冊は丸一日、本に没入する感じで読み終えてしまった。

今、週刊少年サンデーでこの本の漫画版がやっているけれど、
原作のほうが数倍おもしろいので、こちらをおすすめする。
posted by 歯車 at 19:07| Comment(0) | TrackBack(0) | 4つ星本 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2006年12月01日

ぼくと、ぼくらの夏

・ぼくと、ぼくらの夏(樋口有介)評価4.0



ぼくの親は刑事だ。
隣で涙を流しながら、岩沢訓子の死を悼む麻子さん。
彼女の実家の家業はヤクザの親分だ。
仇敵同士の親をもったぼくたちだけど、
岩沢訓子の不可解な自殺事件の真相を知るため、
一緒に夏休み探偵まがいのことをすることになった。
第六回サントリーミステリ大賞読者賞受賞の青春ミステリ。


おもしろかった。
主人公のクールな性格とヒロインのかわいらしさがイイ!
どこか達観した感じのする主人公が言葉によって、
麻子さんや村岡先生など周りの人々をあたふたと狼狽させる様子が笑える。

ヒロインの麻子も魅力的。
普段は凛とした性格なのに感情の起伏がある上限を超えると、
涙を流し当分泣き止まないような子供っぽさがある。
このギャップがとてもかわいらしい。

巻末の作者プロフィールで"現在秩父山中の廃村に独居"とあるけど、
作者は変わった性格の人なんだろうか。
posted by 歯車 at 14:09| Comment(0) | TrackBack(0) | 4つ星本 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2006年11月30日

煌夜祭

・煌夜祭(多崎礼)評価4.0



18諸島の世界を巡り、語り部たちは話を集める。
冬至の夜、語り部たちは人を喰う魔物に物語を聞かせるため館に集う―――煌夜祭。
今年も廃墟となった島主の館で2人だけの煌夜祭が始まった。
第2回C★NOVELS大賞受賞作!

バラバラに配置された物語が、読み終えると同時にぴたりとひとつにつながる快感。
伏線の張り方が絶妙でおもしろい。
表紙の絵もよく作品を表していていい雰囲気。

この作家さんの次の作品もぜひ読んでみたい。
posted by 歯車 at 13:45| Comment(0) | TrackBack(0) | 4つ星本 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2006年11月28日

バーティミアス3

・バーティミアス3−プトレマイオスの門(ジョナサン・ストラウド)評価4.0



ゴーレムの事件より3年。
17歳になったナサニエルは情報大臣という帝国の要職を勤めるまでに成長していた。
しかし、米国との戦争が行き詰まる中、市民の間には魔術師に対する不満が高まっていた・・・。

傑作ファンタジーここに完結。


このシリーズには悩まされた。
1巻は期待はずれで、読むのをやめようかと迷った。
一冊600ページもあるため、読んでいる最中手が疲れて苦労した。
不満点はあったけれど、最終巻を読んだ今はこう思う。

ここまで読んできてよかった。
こんなおもしろいファンタジーをありがとう。

このシリーズの主人公ナサニエルはひねくれている。
ふつうのファンタジーの主人公は腐敗した権力を打ち破るものだけど、
ナサニエルは違う。
自ら進んで腐った山の頂点を目指し、権力を行使できる地位に就くことを強く願う。
そんな奴だから性格はもちろん歪んでいる。
愚かな一般人を導くために魔術師による支配は当然だと考えるような奴である。
そんな嫌な奴が、この最終作であんなに予想外の活躍をするなんて。
あまりのおもしろさに、睡眠時間を削りながら読みえ終えた。

このシリーズは三作読んで初めて評価できる作品である。
ぼく自身、一作目の"サマルカンドのアミュレット"はつまらないと感じたため、
三作目がこんなにおもしろいとは予想していなかった。
話がおもしろくなり始める二作目までが長いので、敷居は高いかもしれないけれど、
ファンタジー好きにはぜひ読んでほしい作品である。

今作は完結作とのことだが、
続きがあるようなラストなのでファンとしてぜひ続編が出ることを期待したい。
posted by 歯車 at 15:54| Comment(0) | TrackBack(0) | 4つ星本 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2006年11月24日

僕らの事情。

・僕らの事情。(デイヴィッド.ヒル)評価4.5



「ゴール!」

敵チームのやつらは、口をあんぐりと開けたまま立ちつくしていた。
ぼくたちは歓声をあげながら、手を叩いた。
ゴールポストの間を走って、そのままネットに突っ込んだサイモンの口元には、
にやりとした笑みが浮かんでいた。
サイモン。
頭がきれて、ユーモアのセンスは抜群。
ぼくの親友。
そう、来年か、再来年かには死んでしまう、ぼくの親友。
どんなに悲しいことがあっても生きることは素晴らしい。
ニュージランド発の青春小説。


当たり本。
SNSでこの本のレビューを書いて本の存在を教えてくれた人に感謝。

主人公と不治の病を抱えた登場人物が心を通わせる話には、
無理に泣かせようとする作品がある。
たとえば、セカチュウ、たとえば、オグ.マンディーノのとある本。
基本的にそういった本はわざとらしく卑怯な感じがして嫌いだ。
この本の主人公ネイサンの親友サイモンは筋ジストロフィーという不治の病に冒されており、近いうちに死ぬ運命にある。
嫌いな泣かせ本と似た設定なのだが、それなのにおもしろいと感じた。

まず、サイモンの性格がストライクゾーンだった。
もともとハリウッド映画にあるような攻撃的なんだけど、笑いを含んでいるようなアメリカ風の皮肉は大好き。
弱っていく自分の身体さえジョークのネタにして毒舌を吐くサイモンの性格を誰が嫌いになれようか。

次にこの本が泣かせることではなく、
ネイサンとサイモンのふたりの友情の育みを描くことに主眼が置かれていたためだろう。この本の大部分はネイサンとサイモンのユーモラスな日常が描かれている。
サイモンの悪くなっていく病状や不満足な身体への嘆き。
そういった物語の核である重い部分もきっちりと描かれているが、割と軽いタッチでさらりと描写してある。
それだからだろう、不治の病という暗い設定が背後にあるのに、
楽しげなふたりの生活には自然と微笑んでしまう。
それで、最後まで微笑みながら読んだのかというと、最後はやっぱり泣いた。
悲しさばかりでなく、爽快さを含んだ涙。
うーん、なんか不思議な感覚。
もうふたりの友情に乾杯って感じ。

表装もいい。
青空を背景に飛び出すようにジャンプする少年の両足。
何かの殻を打ち破り走り出しそうな疾走感を感じる。

いろんなことがツボに入った本でした。

本より、自分的メモ
みんなが思わず新聞を買いに走ってしまう見出しの要素。
「上流社会、セックス、宗教、ミステリ」
posted by 歯車 at 23:21| Comment(0) | TrackBack(0) | 4つ星本 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2006年11月13日

風に桜の舞う道で

・風に桜の舞う道で(竹内真)評価4.0



早朝マラソン、失恋、喧嘩、家出、受験。
浪人生として1年間過ごした桜花寮。
あれから寮は閉鎖され、ぼくたちは別々の道を辿っている。
気がつけば、いつの間にやらあれから10年が経った。
懐かしさとほろ苦さを感じさせる青春小説。

作品全体に漂う懐かしい香りが心地いい。
青春時代にたった1年過ごしただけなのに、
いまだ寮生たちが絆を感じ続けていることをうらやましく思う。

この作品にも自転車で移動するシーンがあったけど、
竹内さんはよほど自転車のことが好きなんだろうな。
posted by 歯車 at 16:08| Comment(0) | TrackBack(0) | 4つ星本 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2006年11月07日

いつもの朝に

・いつもの朝に(今邑彩)評価4.0



容姿端麗で成績優秀な兄。
顔はにきびだらけで落ちこぼれの弟。
テディベアに隠された謎がふたりの兄弟の歯車を狂わせる。
戦慄と感動のホラーミステリ。

おもしろい。
登場人物がだんだんと追い込まれていく展開や二転三転する状況。
物語にぐいぐいと引き込まれる。
家族愛や兄弟愛を感じる読後感もいい。

著者の他作品も読みたくなった。
posted by 歯車 at 08:09| Comment(0) | TrackBack(0) | 4つ星本 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2006年11月05日

SOKKI!

・SOKKI!-人生には役に立たない(秦建日子)評価4.0



大学時代、ぼくは"速記研究会"に入っていた。
速記に興味すら持っていなかったぼくが速記研究会に入ったのは、
きれいな女の子に誘われたからだった。
ああ、なんて単純で恥ずかしい理由だろう。
新鋭の作家が描くスーパーマイナー技術にかけた青春。


おもしろい。
恋愛、友情、熱血の青春の三要素がしっかりと詰め込まれた一冊。
冴えない主人公が風変わりなヒロインに振り回される様子が
なんだか見ていてほほえましい。

80年代の早稲田大学が舞台なので、
その辺に青春時代を送った人はツボにはまるかも。
posted by 歯車 at 21:19| Comment(0) | TrackBack(0) | 4つ星本 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2006年11月02日

火天風神

・火天風神(若竹七海)評価4.0



衝撃が健次を弾き飛ばした。

それが凄まじい勢いの風のなせる業だとわかったのは、しばらくしてからだった。
気づけば健次は縄にがんじがらめにされ、網にかかった魚のように宙に浮いていた。
落下の衝撃でロープが胸をしめつけられ、肋骨あたりから嫌な感触が響いてきていた。

「叔父さん、叔父さん」

朦朧とした頭のどこかで甥の声が聞こえた。
三浦半島に接近した最大瞬間風速70m超の観測史上最大規模の台風。
うなる海と荒れ狂う風の中でしらぬいハウスの滞在客は恐怖と絶望を感じた。
大自然に翻弄される人々を描いた傑作パニック小説。


おもしろい。
滞在客に次々に降りかかる災難に最後まで息が抜けない。
杉田の嫌悪感を感じさせる下種ぶりもいい。
彼のおかげで緊張感が生まれ、おもしろさが増している。
posted by 歯車 at 09:16| Comment(0) | TrackBack(0) | 4つ星本 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2006年10月29日

フライ、ダディ、フライ

・フライ、ダディ、フライ(金城一紀 )評価4.0



そう、私は家族を守るためなら生命の危険も厭わない四十七歳のサラリーマン、のはずだった。
そう信じていた。
あの日が訪れるまでは―――。
いまから私が話そうと思っているのは、私のひと夏の冒険譚だ。

爽快な青春小説の傑作、ゾンビーズシリーズ第二弾。


元気を与えてくれる物語。

「一番大切なものでさえ自分は守れないのか」

自分の弱さを突きつけられ自己不信に陥った主人公のおじさんは
ふがいなさに悩むぼくたちとよく重なる。
それだからだろう、
おじさんがゾンビーズのメンバーの手を借りながら、
弱さや恐怖と正面から向き合い打ち勝ち徐々に自分を取り戻していく姿は
ぼくたちを自己嫌悪という泥沼から救いだし、前に進む力強さを与えてくれる。

スンシンとおじさんの親子のような交わりも温かくていい感じ。
posted by 歯車 at 22:57| Comment(0) | TrackBack(0) | 4つ星本 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2006年10月09日

バスジャック

・バスジャック(三崎亜記)評価4.0



二階にドアをつけさせようとする町内会。
ぼくの部屋を図書館だと思い込み、本をに借りにくる見知らぬ女。
バスジャックが娯楽化した世界。

"となり町戦争"の著者が描くリアルで奇妙な日常をおさめた短編集。


ふつうではありえない非日常的な物事を無理矢理はめこまれた日常。
なぜ?どうして?
どの作品にもひんやりとした不思議さが漂っている。
乙一さんの作品とも似た感覚である。

好きな作品は"二階扉をつけてください"

"世にも奇妙な物語"が好きな人はぜひどうぞ。

こちらの公式サイトで本に掲載されている短編が読めます。
http://www.shueisha.co.jp/busjack/
posted by 歯車 at 12:57| Comment(0) | TrackBack(0) | 4つ星本 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

復讐する海

・復讐する海(ナサニエル・フィルブリック )評価4.0



最初に目に入ったのは骨だった。

ついで2人の男が見えた。
皮膚は一面にただれ、目は眼窩から飛び出し、
ひげは塩と血でばりばりになっていた。
彼らはボートの中で死んだ船員仲間の骨の髄をすすっていた。

1821年、捕鯨船エセックス号に乗船していた20人の乗組員は
100日近く海を漂流した。
無くなっていく食料、くじ引き、口にした人の肉。
極限状態の人間の心理と生理を描いたノンフィクション。

サバイバルという状況が好きなので、評価点に+0.5。

航海術、備蓄食料、ナンタケット島の風土、乗員の著書。
当時の様々な資料をもとに状況を考察し、
冷静な視点からエセックス号の悲劇が描かれている。
淡々とした筆致は逆に生々しく乗組員たちの苦境を浮かび上がらせ、
刺すような日差し、身体をべたせる潮風を自らが受けているいるかのような感覚を覚えた。

エセックス号の乗組員たちは生き延びるために人の肉を食べることを選んだ。
倫理や信仰を捨て仲間の肉を食べねばならない状況。
自分はどうするだろうか。

これほどの苦難に遭遇したのに、
乗組員の中に再び海に挑んだ者がいたことには尊敬するばかりである。
posted by 歯車 at 11:10| Comment(0) | TrackBack(0) | 4つ星本 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2006年10月03日

The Manzai3

・The Manzai3(あさのあつこ)評価4.0



「絶対、漫才なんかやらないからな」

神経質で気弱で消極的で人見知りで、その上あがり症で漫才なんか向いていないぼくを
秋本は漫才コンビをつくろうと誘う。
それを断固拒否する毎日。
いい加減疲れてくる。
そんな中、病院の廊下でぼくは落ち込んで廊下を歩くメグを見かける。
メグ、いったいどうしたんだ?
しつこい秋山、にらむメグ、コンビ結成をはやし立てるまわりの友人たち。
歩の夏はいちばん暑い季節を迎えていた。
バッテリーの作者が描く、ちょっとだけ特別な物語。

シリーズ三作目。
徐々にコンビ結成に肯定的に動いていく歩の心理。
メグへの片思い
心の機微を描写するのが相変わらずうまいです。
バッテリーの文庫本の最終巻も楽しみだけど、
こっちの続編も早く出て欲しいと思う。
posted by 歯車 at 08:50| Comment(0) | TrackBack(0) | 4つ星本 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2006年10月01日

シンデレラ・ティース

・シンデレラ・ティース(坂木司)評価4.0



「ホント、歯医者なんて大っ嫌いなんだから」

小学生の頃のことだけど今でも思い出す。
耳障りなドリルの音、歯に感じた激痛、口の中の血の味、やめて、と泣き叫ぶわたし。
以来、歯医者に行けといわれたら迷わず遁走する。
しかし、この夏、
歯医者嫌いのわたしが母にはめられ歯医者でバイトすることに!?
新鋭の作家が描く、歯医者さんが舞台の連作短編集。


坂木司の描く、ハートウォーミングな職業ミステリの新作。
おもしろいです。
良い小説に出会ったときに過度の興奮の熱を冷ますための奇行、
部屋の中を歩き回ったり、自分の頭をぽんぽん叩いたりしながら読みました。
それほどよかったです。
これまでの坂木さんの作品は主人公は男性だったけど、今回は女性。
これがうまく効いておもしろさが増しています。
坂木作品ではおなじみの、
付き合い下手だけど誠実という探偵役のキャラクターもいい味出ています。
坂木さんの作品をはじめて読む方も、ファンの方も楽しめるいい小説です。
posted by 歯車 at 21:27| Comment(0) | TrackBack(0) | 4つ星本 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2006年09月30日

家守綺譚

・家守綺譚(梨木香歩)評価4.0




これはほんの100年前の物語。
庭、池、電燈付きの二階屋での、四季折々の天地自然の「気」たちとの、
のびやかな交歓の記録。
文士、征四郎の不思議な生活を綴った奇譚集。
(Amazonより引用)


癒される短編集。
日本の古き良き時代を感じさせる空気、
主人公の悠々自適な生活、
不思議な登場人物たちとの親睦。
ほっと息をつくような安らぎを感じさせられる。
くつろげる短編がたくさんつめらえた本なので
床に着く前に一日一作品ずつ読んでいけば、
くつろいだ気分で眠りにつくことができるだろう。

この本は図書館で借りたが、読み直せるように購入する予定。
最近、文庫本も出たが、
表装が単行本のほうがおもむきがあり味わい深いので
どっちを買うか迷うところである。
posted by 歯車 at 11:22| Comment(0) | TrackBack(0) | 4つ星本 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2006年09月24日

箱-GETTING OUT OF THE BOX

・箱-GETTING OUT OF THE BOX
           (ジ・アービンガー・インスティチュート)評価3.5→4.0




職場での人間関係、家族間の不和、周囲へのいらだち。
すべての原因はあなたが箱に入ることによって生まれる。
あなたを蝕む"自己欺瞞"から抜け出す方法とは?
"自己欺瞞"について述べた全米ビジネス書ベストセラー。



元の販売価格が1500円だったのに、
中古の値段が10000円近いと言うプレミア本。
絶版とネットでの評判が中古の値段に拍車をかけていると思われる。

この本は上司と部下が対話していく方式で進んでいく。
ビジネス書というよりは小説に近い形式。
小説に親しんでいるぼくとしてはとても読みやすい。
読者に「自分の場合はどうだろう?」と省みさせる構成は素晴らしい。
読み終えて、生まれ変わった気分になる。
この本のおかげで自分と周囲の人との関係を考えるきっかけを得た。

ただ経験の薄さのためか他の人が感想に書いてあるような強い共感は抱けなかった。
社会人ではない、甘ちゃんの大学院生のためだろうか。

この本についての参考サイト
://dain.cocolog-nifty.com/myblog/2005/10/post_2312.html
(アクセス解析対策のためurlより「http」を抜いておきます)


2006/9/26追記
読んでから数日経って、
この本が示す自己欺瞞に自分も陥っていることがじわじわとわかってきた。
よくよく考えると自分の物の見方がなんとゆがんでいたことか。
読んだ直後はそれほどいい本だと思えなかった要因は、
他人事のように読み進めていたからだろう。

これからは脱自己欺瞞!
目指せ!Getting out of the box!に励むことにする。

評価点変更:3.5→4.0
posted by 歯車 at 15:33| Comment(0) | TrackBack(0) | 4つ星本 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2006年09月21日

自転車少年記

・自転車少年記(竹内真)評価4.5





生まれて初めて自転車に乗れたことを昇平は今でもはっきりと憶えている。
駆け下りた急勾配の坂。
ブレーキの効かなくなった自転車。
背中に吹き飛んでいく風景。
止まれず突っ込んだ生垣。
おどろいた表情でこっちをみつめていた草太。
かけがえのない友達と出会った瞬間だった。
自転車と共に成長してきたぼくらの青春グラフィティー。



4歳から29歳までの25年という長い年月の間に
初恋、失恋、出会い、別離、挫折を経験した昇平と草太の歩みを
自転車を中心にしながら丁寧に描かれている。
初めて自転車で遠出したときの話など、
自分の子供頃のことを思い出してとても懐かしくなった。
後半部分の昔の友人が集まる場面では泣いた。
せつなくも爽快な気分になるいい小説でした。
posted by 歯車 at 23:07| Comment(0) | TrackBack(0) | 4つ星本 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2006年09月18日

図書館内乱

・図書館内乱(有川浩)評価4.0





メディア良化法により出版物の超法規的検閲が行われる架空現代。
メディア良化委員会と図書館隊との抗争は激化し、
互いに火器を使用するに至った両陣営の対立は内乱状態に近いものになっていた。
熱血バカ、笠原郁はまっすぐに突き進み、
怒れる上司、堂上篤は怒鳴り声をあげる。
"図書館戦争シリーズ"第二弾。



図書館隊の原則派と行政派の内部の政治劇を中心にストーリが展開。
両陣営のどろどろした駆け引きがおもしろい。
話はちょうど一番の盛り上がりを迎えたいいところで終わっており、
次の巻の展開が気になって仕方がない構成がにくい。
連作小説のように短編をつなぎ合わせた形で話が進んでいく。
短編ごとに主となるキャラクターを変えることで、
小説中の登場人物それぞれを深く掘り下げ、感情移入しやすくしている。
うまいなぁと。
このシリーズは表紙もいい。
表紙には作中に登場した登場人物や小物が散りばめられていて
読後に眺めるとにやりとしてしまう珠玉の出来。
いい本です。
posted by 歯車 at 10:34| Comment(0) | TrackBack(0) | 4つ星本 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2006年09月12日

今ここにいるぼくらは

・今ここにいるぼくらは(川端裕人)評価4.0




うっすら潮の香りが漂う町なのに海は見えなかった。
新興住宅街のぼくの家の近くには川があった。
家の近くの上流と下流、周囲200mが母さんの許されたぼくの遊び場だった。
そのころ、ぼくは7歳に過ぎず与えられた小さな世界のことだけで、手一杯だった。
小学生の博士を主人公に、どこか懐かしい匂いの連作小説。


思い浮かんだのは、子供のころに遊んだときのこと。
川の源を探検する場面が出てくるけど、
ぼくもよく近所の子とドブ川を遡って遊んだし、
途中、見つけた沢蟹を捕まえて飼ったりもした。
懐かしさを感じさせる小説は好き。

構成もよかった。
初めは狭い川面だけだった主人公の世界が
それが話が進むにつれ、
新しい友達や知り合いが増えていき、
だんだんと賑やかになり広がっていく。
小学生の世界が大きくなっていく様子ってこんな感じだったよね。

最近、当たり本が多くてうれしい。
posted by 歯車 at 23:57| Comment(0) | TrackBack(0) | 4つ星本 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

夏雲あがれ

・夏雲あがれ(宮本昌孝) 評価4.0




文殊事件より7年。
新吾、太郎左、仙之助の三人は青年へと成長していた。
身分の違いにより振る舞いを左右される大人の世界に窮屈さを感じながらも、
まっすぐに生きようとする三人。
その裏で再び藩を動乱に導かんとする権力闘争と策謀の炎があがらんとしていた。
痛快さと青臭さが売りの傑作小説。



「藩校早春賦」の続編。
新吾、太郎左、仙之助の三人の変わらない深い絆には
文章を追う目は熱くなるばかりである。
三人を取り巻く大人たちの温かさも心地よい。
黒いものが渦巻く藩政の闇の部分に徐々に光を当て
陰謀を明るみに出していく三人の行動には爽快さを感じた。

今作では決着がつかなかった新吾と志保のこともあるし、
ぜひ続編を出してほしいと思う。
posted by 歯車 at 13:16| Comment(0) | TrackBack(0) | 4つ星本 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2006年09月10日

藩校早春賦

・藩校早春賦(宮本昌孝) 評価4.0





身分の低い武家の三男で疑問は突き詰めずにいられない性格の新吾。
同じく下級武家の長男の高田道場随一の剣の使い手である太郎左。
名家曽田家の長男だが、なよなよしてどこか頼りない仙之助。
身分も性格も違う武家の少年たちが権力闘争や陰謀に巻き込まれながらも、
厚い友情を育んでいく青春物語。



主人公の少年たちが友情を深める様や成長していく姿は
読んでいて心地よいし、
幼さが抜けきらず甘さの残る少年たちが
大人たちも戸惑うような困難を打ち破っていく様は爽快な気分にさせられる。
禁欲的に剣に生きるような歴史小説もいいが、
こういった少年の成長と友情を題材にした小説も好きになれそう。
posted by 歯車 at 23:04| Comment(0) | TrackBack(0) | 4つ星本 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2006年08月17日

悪童日記・ふたりの証拠・第三の嘘

・悪童日記(アゴタ・クリストフ) 評価4.0




戦争は激化し"大きな町"は危なくなった。
ぼくら双子は"小さな町"に住むおばあちゃんに預けられることになった。
おばあちゃんはぼくらのことを"牝犬の子"と呼ぶ。
そして、何かにつけて箒や濡れ雑巾でぼくらを殴る。
町の人々もぼくらに平手打ちや足蹴りを喰らわせる。
ぼくたちはそういった痛みに慣れるためお互いで殴りあう。
人々の悪口に耐えるためお互いを罵り合う。
空腹に勝つため絶食する。

ぼくらの過激な日々が始まった。

続編のふたりの証拠・第三の嘘につながる第一作目。


巡回サイトで徹夜本として紹介されていた本。
たしかにおもしろい。
双子が残酷で不条理な現実をしたたかに生きていく様は見ていて心地よいし、
常に不安定な感じが付き纏う展開は本を閉じることを拒ませる。
ラストも衝撃的。

あと、感心したのは表現方法。
「楽しい」、「うれしい」、「おいしい」などの主観的な表現を使わない客観的な事実のみを用いた描写、
人物名など固有名詞を極力排した文章など、
新鮮に感じる部分が多かった。



・ふたりの証拠(アゴタ・クリストフ) 評価4.0

悪童日記の続編。
双子のその後の物語。
前作とは一転して固有名詞が出てくる。
しかし、感情表現を排した描写方法は健在。
客観的な事実のみを用いることで残酷な現実を浮き彫りにする。
前作に続きラストも衝撃的。


・第三の嘘(アゴタ・クリストフ) 評価3.5

ふたりの証拠の続編。
三作目は内容を説明するとネタバレにつながるのと、
自分にまとめることのできない内容だったので、
評価のみということで。
posted by 歯車 at 21:13| Comment(0) | TrackBack(0) | 4つ星本 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2006年08月06日

モンテクリスト伯

・モンテクリスト伯1-7(アレクサンドル・デュマ) 評価4.0



ファラオン号がマルセーユに寄港した日。
エドモン・ダンテスは希望に胸を膨らませていた。
次期船長の話、フィアンセのメルセデスとの婚約。
青年の先には輝かしい未来があった。

数日後、その未来は4人の貪欲な男たちによって消し飛んだ。

ダンテスは身に覚えの無い罪により
死の牢獄「シャトー・ディフ」に幽閉されることとなった。
囚人34号として14年に渡る獄中生活がはじまった。


モンテクリスト伯は復讐劇、冒険譚として知られている作品。
ネットでおもしろいと評判だったので読んでみた。

おもしろよ、この本。

デュマの力ってすごいんだね。
100年近く前の作品なのに、全然色あせていない。
雄大な構想、緻密な構成、多彩な登場人物。
いろんな要素をうまく使い分けて、
100年間おもしろく読める傑作小説に仕上がっている。

ただ残念なのことが1つある。

今日、書店で入手できる唯一の完訳である
岩波文庫の「モンテ・クリスト伯(全7巻)」(山内義雄訳)を読んだわけだけど、
この訳が無茶苦茶、古い。
例えば、
「そんな大名みたいなお金の使い方なんて(フランスが舞台なのに大名って)」
「ぼくはちゃきちゃきのパリっ子さ(ちゃきちゃきって、江戸っ子かよ、おい)」
所々、妙な感じのところがあった。
ぜひ、新訳が出てほしいと思う。

それにしても、全7冊読むのに1ヶ月もかかったよ。
やはり古典を読むのはエネルギーがいるね。
posted by 歯車 at 11:57| Comment(0) | TrackBack(0) | 4つ星本 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2006年07月02日

重力ピエロ

・重力ピエロ(伊坂幸太郎) 評価4.5



ぼくが2歳になったとき、弟の春が生まれた。
何をやるにしても春が一緒だった。
「兄貴がいれば、すべてがうまく行く気がする。」
ほとんどの時間を一緒に過ごして育った。
父親は違っていても、ぼくたちの仲は良かった。
春が生まれる1年前、
ぼくたちの母親は連続強姦魔によりレイプされていた。

暗い過去を持つ兄弟。
連続放火事件とそれを予見するグラフィティーアートの出現。
2人の兄弟が謎解きに挑戦するとき、車輪は回り始める。

兄弟愛とは?家族愛とは?
伊坂幸太郎の記念碑的作品がここに今文庫化される。


早速購入し、読了。
設定がが重いので、
ナナミさんが好んで読みそうな暗い作品かと思っていたが、
全然違った。

温かい家族愛と兄弟愛に満ちた作品だった。

伊坂幸太郎の作品で初めて泣いた。
2人の兄弟が互いを気遣う様、父親の温かな眼差し。
終盤が止めだった。

「空中ブランコをするピエロのように、
重力を忘れさせるために、メイクをし、玉に乗り、
空中ブランコで優雅に空を飛び、時には不恰好に転ぶ。
何かを忘れさせるために、だ。」
「重いことほど陽気に話すんだ。」

気づけば、鼻水も垂らしながら読んでいた。

こういう温かい物語は好きだ。
セカチュウとか悲劇で泣かせる小説よりずっと心に残る。

「NUMBER GIRL」さんが5回も再読したのも納得の作品だった。
posted by 歯車 at 15:34| Comment(0) | TrackBack(0) | 4つ星本 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2006年06月25日

ラッシュライフ

・ラッシュライフ(伊坂幸太郎) 評価4.0



天才に魅せられ集まった人々が作った教団の幹部塚本と末端団員の河原崎。
綿密な計画を立てて盗みを働く職人肌の泥棒、黒澤。
互いの配偶者を殺す計画を立てる精神科医の京子とプロサッカー選手の青山。
リストラされた後、40社企業の採用試験を受けるもすべて不合格だった豊田。

違う道を歩く人たちの人生が交差したとき、
物語はエッシャーのだまし絵へと収束していく。
4人の人間がつむぐ群像ストーリー。


もう一度読み直したくなるような物語の構成に感心した。
登場キャラクターも味があってよかった。
お気に入りは泥棒の黒澤。
変なところで真面目で
世の中をシニカルに捉えているところに面白みを感じた。

群像ストーリーと言えば、恩田陸の「ドミノ」を思い出した。
ドミノよりラッシュライフの方が好みだね。
ラッシュライフはミステリー要素があり、
その分、先を読ませる牽引力が大きいからだろうね。

「六番目の小夜子」を途中で投げ出したぼくなので、
単に恩田陸と波長が合わないだけという可能性もありますが。
posted by 歯車 at 23:47| Comment(0) | TrackBack(0) | 4つ星本 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
×

この広告は1年以上新しい記事の投稿がないブログに表示されております。